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東京高等裁判所 昭和41年(行ケ)47号 判決 1970年6月16日

原告

株式会社伊勢半

補助参加人

株式会社

エリザベス

右両名代理人弁理士

杉林信義

被告

エリザベス

株式会社

代理人弁理士

中尾房太郎

主文

原告の請求は、棄却する。

訴訟費用中補助参加によつて生じた費用は、補助参加人の、その余は原告の各負担とする。

事実<省略>

理由

一  (争いのない事実)<略>

(本件審決を取り消すべき事由の有無について)

二、原告らは、本件審決を違法として取り消すべき事由として、原告の引用商標が化粧品につき周知著名であり、しかも、婦人用靴下その他の請求の趣旨掲記の商品は化粧品と同一問屋、小売店において取り扱われるものであるから、これらの商品に引用商標を使用するときは、その需要者及び取引者は、これを原告又は補助参加人会社の製造販売するものであるかのように誤認する虞があり、本件商標は、旧商標法第二条第一項第十一号の規定に違反して登録されたものであるところ、本件審決はこれを看過誤認したものである旨主張するが、原告らのこの主張は理由がないものといわざるをえない。すなわち、<証拠>を総合すると、原告がその商標権者である引用商標は、原告及び補助参加人会社において、その製造販売する化粧品に使用し、宣伝に努めた結果、本件商標の登録された昭和三十八年七月当時においては、化粧品、とくに、口紅、香水等につき、取引者及び需要者の間にある程度認識されるに至つたが、これを婦人用靴下その他の原告ら主張の商品に使用した場合、一般取引者、需要者がこれらの商品をもつて、原告又は補助参加人会社の製造販売するものであると信ずる虞があるとみるを相当とする程度に著名周知であつたとはいえないものであつた事実を認定しうべく、前掲甲号各証中右認定に抵触する部分は、その記載内容及び記載事項の性質に徴し、到底信を置きがたく、他に右認定を覆えし、原告らの主張を肯認するに足る資料はない(前掲甲号各証、たとえば、甲第八号証の一には、「引用商標は、昭和三十年末には口紅、香水等につき取引者、需要者の間に広く認識されるに至り著名商標となつた。この頃より化粧品問屋並びに小売店にあつては通常化粧品と婦人用靴下……といつた商品とを同一店舗で取扱い同じ売場にて展示販売するようになつたので、殊に需要者の間にあつては婦人用靴下等の商品をも原告らの製造販売に係る商品であるとの誤認混同を惹起するようになつた。かかる商取引事情のもとで、今後引き続いて婦人用靴下等に(エリザベス)の文字を使用するにおいては化粧品とその出所につき混同を生ずるおそれがあるとの御証明を願います」旨の原告らの依頼に答え、財団法人日本粧業会会長の名において「右証明します」として前記引用事項の事実であることを証明した旨の記載があるが、これらの証明事項、とくに、「昭和三十年末には……取引者、需要者の間に広く認識されるに至り著名商標となつた」「化粧品と婦人用靴下……を同一店舗で取扱い」、「婦人用靴下等を原告ら化粧会社の商品であるとの誤認混同を惹起するようになつた」「出所につき混同を生ずるおそれがある」などの事項は、如何なる調査資料に基づく証明なのか、はたしてそれが事実なのか、はたして証明者がこれを確信したのか等々甚だしく疑問をいだかざるをえない。乙第三号証以下の証明書についても、ほぼ同様のことがいえる。このような証明書の記載が全面的信頼をおくには値しないものであることは何人の眼にも明らかなところであろう)。

(むすび)

三、叙上のとおりであるから、その主張の点に判断を誤つた違法のあることを理由に本件審決の取消を求める原告らの本訴請求は、理由がないものというほかはない。よつて、これを棄却する……。

(三宅正雄 石沢健 奈良次郎)

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